事業承継という選択肢

後継者が見つからない場合、廃業するかどうかで悩まれる経営者の方が多くいらっしゃいます。
しかし、廃業はこれまで培ってきた会社の資源や従業員の雇用が失われてしまうといった社会的な損失が生じてしまいます。
また、仮に多額の借金だけが残るということであれば、廃業したくてもできないということもあります。
M&Aで他の会社に事業を引き継ぐことができれば、従業員の雇用は守られ、取引先にも迷惑を掛けず、オーナー経営者の方は創業者利得を得て幸せなリタイアができるかもしれません。
後継者の問題で悩んだら、まずは専門家に相談してみることが大切です。

早めの相談が大切

事業承継がうまくいくかどうかの最も重要な要因はタイミングです。
タイミングを逃してしまうと、自社の業績の状況が変わり、不利な条件を飲まなければいけなくなってしまったり、
想定以上に時間を要してしまったために、譲渡する側の経営者に健康上の問題が起こってしまい交渉が流れてしまうこともあります。
事業承継の問題はまだ先のことだからということで、ついつい先延ばしにしてしまいがちですが、
より良い事業承継をするためには、早めに相談し、早めに検討を始めることが非常に大切です。
早めに検討できると、良い事業承継先をじっくりと探すことができ、市場の動向や自社の業績を踏まえてベストのタイミングで引き継ぐことができます。
検討を始めるのに、早すぎるということはありません。

M&Aのメリットと留意点

会社を他社に譲渡するM&Aには、多くのメリットがあります。
後継者候補を外部に広く求めることができ、取引先との関係や従業員の雇用をそのまま引き継ぐことができます。
また、譲受先と一緒になることで、事業のさらなる発展が期待でき、譲受先は一般的には財務状態が安定しているため、財務的な基盤も強固にすることができます。
さらに、オーナー経営者としては、会社を譲り渡した対価として資金を得ることができるので、負債を清算したり、その後の生活資金を確保することができます。
このように多くのメリットがある一方で、留意すべき点もあります。
譲受先を見つけるには、ある程度時間がかかります。相手が見つかってからの交渉に長い時間がかかることもあります。
また、M&Aを検討していることが従業員や取引先に思わぬ形で伝わってしまうと、良からぬ影響が出てしまったり計画が失敗に終わってしまうこともあります。
M&Aには、多くのメリットと共にいくつかの留意点がありますので、両面を合わせて考えながら、進めていきましょう。

変化しているM&Aのイメージ

M&Aというと、「身売り」、「冷たい」、「専門的でよくわからない」などのネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、近年では十分な交渉を行ったうえで、M&Aにより円滑に事業を引き継ぐ事例も増えています。
また、M&Aは大企業が行うものというイメージを持つ方もいらっしゃいますが、今やM&Aは大企業だけのものではなく、中小企業でも検討される身近なものになってきています。
後継者問題の解決策の一つとして、日本では今、中小企業の友好的なM&Aが増えています。

M&Aの準備(会社の磨き上げ)

M&Aを視野に入れて動くにあたり、準備しておくとよいことがあります。その一つが、会社の「磨き上げ」です。
磨き上げとは、M&Aを行う前に会社の価値を高める取り組みのことで、これを行うことで会社の魅力が上がり、良い相手が見つかったり譲渡価格が上がる可能性が高まります。
磨き上げで大切なことは、自社の強みを作ることと内部統制(組織・業務を適正に動かしていくための仕組み、システム)を構築することです。
自社の強みについて、特に中小企業の経営者には「うちには強みというほどのものはない」と思い込んでいるケースもありますが、目に見えにくく、表からはわかりにくい経営資源(経営者の人脈、従業員のノウハウ、取引先との関係性、企業文化や社風などの知的資産)が強みの源泉となっていることも多くあるので、自社について客観的に、かつ丁寧に分析することで、強みを見出すことが大切です。
また、内部統制の構築については、特にオーナー企業として会社を経営している場合は、オーナーであることと経営者であることの境目が曖昧なことから、会社組織としての状態や仕組みについても曖昧になっていることがあります。職務に対する職責や権限を明文化したり、就業規則を整えたり、業務の流れを明確にするなど、統制のとれた組織づくりに取り組みましょう。
その他に、オーナーと会社の資産の線引きを明確にし、社長の社宅や自家用車など事業に関係のない資産も整理・把握しておきましょう。

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